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2008年08月06日:アニメ制作あれこれ・スポッティング編

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現在制作中の「無限の住人」最終話ですが,制作中の映像をチェックした監督が音響作業のやり直しを宣言.どうもラストの音楽の入り方に納得いかなくなったようで.(以前に書きましたが選曲は監督自身が行っています)6月に終わった筈なのにいまさら...


というわけで,音楽つながりで今回は「スポッティング」の話を.

アニメーション業界においてのスポッティング作業とは,音楽と映像を同期させる為に,音楽のタイミングをタイムシートに記録していく作業をさします.この歌詞の歌い出しは何秒何コマ目から,とか,ここのギターは何秒何コマ目から何秒間,みたいな感じで1コマ(1/24秒)単位で記録していきます.

楽曲の譜面やミックス前のDAWデータがあれば歌い出しやギターの出が何秒目かなどすぐに判るのですが,ほとんどの場合ミックス後の楽曲をCDや音声データでポンと渡されるだけ(プロフェッショナルであれば当然と言えますが)なので,ある意味原始的なこの作業が必要になる訳です.

以前はCDやMDを再生しながらプレイヤーのタイムカウンタを読んだり,さらに昔はオープンリールの6ミリ磁気テープやシネテープを再生しながらダーマトグラフ(色鉛筆的なもの)でテープに直接書き込みながら記録していましたが,御多分に洩れず最近は波形編集ソフトウェアを使用することで誰でも簡単に作業を行える様になりました.(オープンリールのテープは一定箇所の物理的な長さを測れば再生時間に変換出来るし,スロー再生等も手作業でリールを回す事でかなり自由に行えたので,そういう意味では波形編集ソフトウェアより直感的で判りやすかったと言えますが,今や録音再生出来る機材もなかなかありませんので...)

いずれにせよ,作業環境が変わろうとも何度も繰り返し楽曲を聴きながら記録していく作業そのものは変わりません.アニメーション業界では前述の必要機材の関係上,編集スタッフがスポッティング作業を行うケースが多い様ですが,波形編集ソフトウェアの登場以降弊社の場合は主に担当演出が行っています.これは,担当演出も絵コンテ作業に入る前に楽曲を聴き込む必要がある為,どうせならスポッティングもまとめてやった方が楽曲の構造を細かく分析出来るだろうという理由と,編集の私があまり仕事をしたくないという理由に依ります.主に後者.

というわけで私自身最近はスポッティング作業を行う事はなかったんですが,たまたま他社の作品の編集を担当する事になった関係でここ最近何度かスポッティングを行ったので,ついでにこちらに書いておきます.業界として特に正式な作業方法も決まってないので,今回行った私独自の作業の流れですが.


・環境
映像同期が目的なので,使用する波形編集ソフトウェアはタイムカウンタを1/30秒や1/24秒単位で表示出来る物を使用すると作業しやすいです.多くのソフトウェアは映像制作を考慮に入れて設計されていないので,1/100秒とか1/1000秒単位,あるいはサンプリング周波数単位だったりしてスポッティングで使用するには変換がやっかいです.特に1/24秒で表示できるソフトウェアはかなり少ないかなぁ.私の場合は映像制作用に特化されているAppleのSoundtrackProを使用しています.

・事前準備1 フォーマットに合わせる
オープニングなど多くの場合は映像の長さが予め決まっています.また放送などでは楽曲の前後に無音部分の挿入が必要な場合が多いので,完成した楽曲のデータを指定されたフォーマットに合わせて整える必要があります.

・事前準備2 小節単位を分析
フォーマットに合わせた楽曲でそのまま作業してもいいのですが,多くの場合楽曲は小節で分割されていますのでスポッティングもそちらに倣った方が作業上かなり楽です.私の場合は楽曲のBPM(テンポ)を測定して,そのクリック音(メトロノーム的な音)を生成し楽曲とミックスする事で小節管理をしています.波形上に目盛りを打つ感じです.

・スポッティング1 分析と選別
実際のスポッティング作業ですが,スポッティングは採譜とは違うので細かくドレミを記入すればいいという物ではありません.映像と音楽を同期させる場合,歌詞の一部分や特徴的な楽器の音と合わせる場合が多い為,ある程度絵コンテなり演出を行う立場に立って必要な事項を取捨選択する必要があります.(そういう意味でも上で述べた様に担当演出が行う方が効率的な場合が多い)多くの場合スポッティングを行う楽曲はインストゥルメントではなく歌モノなので,とりあえず全ての歌詞の位置と,ドラムの出やギターのリフなど特徴的な器楽部分が判ればスポッティングとして成立します.例外的に楽器を演奏する場面などを作画する場合,それこそ音符のレベルで細かくスポッティングと運指の作画を行う必要がありますが,まぁ,正直あまりやりたくはないですね...

・スポッティング2 タイムシート記入
実際は上と同時並行的に行う事になりますがタイムシートに記入します.前述した様にアニメーションは多くの場合1/24秒単位で制作されるので,記入も1/24秒単位になります.今回は他社の仕事なので,とりあえず丁寧に書かなければならなかったのと,かと言ってきちんと清書するのもめんどくさかったので,紙を一切使用せずにOpenOffice Calc(Excel的なソフトウェア)で記入した内容をAdobe illustratorに流し込むスクリプトを作成して,そのままPDFデータで納品する形を採りましたが,特に決まった書式もないので他人が読んで理解出来る様に記入すればいいと思います.自分で使う場合には殴り書きでもいいんじゃないでしょうか.


...というわけで,巷で放映されているアニメーション作品のオープニングやエンディングなどでは多かれ少なかれこのような作業が行われた上で絵コンテの作成や作画が行われ,出来上がった映像と楽曲を最終的に編集の段階でさらに細かく同期させる感じで作られています.

以上,長文の割には視聴者の皆様の生活に役立つとはとても思えない内容ですが.今回はこの辺で.

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